彼は定職に就く気になってくれただろうか。
昨年末のこと、行きつけのバーに初めて見る20歳の若者がいた。
店長からその青年が将来について悩んでいるということを聞き、話を聞いてあげてくれないかと言われたので、お酒も入っていたこともあり快諾した。
どんな悩みなのだろう?
仕事?お金?人間関係?
20歳の若者と話す機会などなかなか無いので、興味津々だった。
それが間違いだった。
彼の詳細なスペックは薄っすらとしか覚えていないが、大したスペックではない、と言うよりも時間以外には何も持たない若者だった。
以下、そんな彼とのやり取り。
彼「ぼく、将来大きなことがしたいんです。どうすればいいと思いますか?」
私『(???)何か将来の夢とかやりたいことがあるってこと?』
「まだ何がしたいとかは決まっていないんですが、サラリーマンになって普通に働くとかは考えられないんです」
『(サラリーマンの俺に相談することか?)まぁ、その歳でやりたいことが明確になっている方が珍しいよね。現時点で明確なビジョンがないのでれば、将来事業をおこしたりするための種銭を蓄えておくといったためにも、一回働いてみたら?何かやりたいことが見つかったら辞めればいいし』
「それじゃダメなんですよ。働いたら負けっていうか、自分の時間を会社に捧げたくないっていうか。今の時代、若い人でも十分活躍できるじゃないですか」
『(あぁ、これヤバい奴だ…)じゃあ、まずはWEB系の知識付けるためにもプログラミングの勉強をするとか、或いはお金を稼ぐためだけの自分なりのビジネスモデルを考えてみて実践してみては?』
「どっちかって言うと、自分で手を動かして何か作るよりも、アイディアを出したり、人に指示しながらチームを動かしていくタイプなんですよね」
『(じゃあ、まずは自分の将来について何かアイディアを出してこいよ)うーん、難しいね。現時点で何かを始めるにしてもアイディアもお金もないってことでしょ?元手がないのであれば、ブログとか書きながらアフェリエイトの広告収入を狙いつつ、その分野で有名になることを目指してはどう?』
「それだと人との差別化が難しいし、有名になるまで時間かかりますよね?何か良い方法ないですかね?」
『(そんな魔法はないし、あったら俺が使ってる)金ない、スキルない、人脈ない、アイディアない、これだと何も始まらないよね?やはり、一度普通に仕事した方がいいよ。このまま何もしないで無駄に時間だけ消費するのはリスク高いよ』
「オンラインサロンとかってどうなんですかね?」
『(こいつ、人の話聞く気ないな)オンラインサロンは意識高い系の人たちが集まって研鑚を重ねていく場なので、何の装備も無しに乗り込んでいってもツライ思いするだけだよ。どのサロンに入るかにもよるけど』
「なんかいいサロン紹介して下さいよ」
『(ggrks.)いや、ビジネス系のサロンには入ったことないから分からないな。調べたら沢山出てくるから、自分で探して相性良さそうなところに入った方がいいですよ』
「えっ、オンラインサロン入ったことないんですか(薄ら笑い)」
『(こいつ何か大きな勘違いしているな)あのね、オンラインサロンは一部では盛り上がっているような報道もあるけど、実社会では入会している人の方が少数派だよ。あと、オンラインサロンは君を有名にしてくれるためのプロデュースなんかはしてくれなくて、サロン主とサロン内でも意識高い系の上位数パーセントが意見交換をしているだけで、何の目的も入らずにただ入会してもROM専になって時間とお金の無駄だよ』
「なんだ。あんまり夢ないっすね。」
『…』
「やっぱり、普通に就職するのが無難ですかね?でも普通に働くのはなんか違うんだよなー」
『……』
「サラリーマンって夢がないっていうか、ある程度人生が見えちゃうじゃないですか?」
『………』
「自分はもっと人と違う生き方をしたいっていうか、大きいことをしたいんですよ」
『…………』
「ZOZOの前澤さんがTwitterで100万円配ってたじゃないですか?ぼくも人を喜ばせたり、夢を与えるようなことがしたいんですよ」
『……………(ニッコリ)』
「ぼく、どうすればいいと思いますか?」
『(ブッッッチー)知らねーし!お前みたいな何も持たず、行動を起こさず、言い訳だけを探しているような輩は何者にもなれないし、大きなことなぞ出来やしねーよ!前澤さんみたいに大きなことがしたい?前澤さんも小さなビジネスから始めて今があるんだよ!あと、なんか違うの”なんか”って何だよ?まずは言語化にしてみろ!具体的な課題が出てきたらいくらでも提案してやるよ!あとな、何でも人に聞こうとするその姿勢もダメだが、それ以上に自分の望まない助言に対して一切耳を傾けようとしないその姿勢がもっとダメだ!聞く気がないなら、聞く気がないなりに自分で調べて、さっさと行動しろ!それが出来ないならウダウダ言ってないで働け(怒)』←実際にはもう少しマイルドな口調だった…はず!
と、15歳も年下の青年に噛み付いてしまったわけです。
お酒が入っていたとはいえ反省しています。
表面では「やっぱりそうですよね。そういった意見も聞けて良かったです」というようなことを言いつつ、心の中では「なにも成し遂げられていない35歳が偉そうに語りやがって」と思っているのでしょう。実際、なにも成し遂げられていない35歳だし。
大きな夢や希望を持つことは素晴らしいことだと思いますし、それをおおっぴらに語れちゃうのは若者の特権だと思っています。
その夢の大きさに見合った努力をしていない人は夢を語る資格がないと言うつもりもありませんが、稚拙でも良いのでそこに到達するまでのビジョンを持つなり、小さくてもいいから何か行動を起こしていると説得力も増して、周りの人たちを巻き込めるのに勿体ないなと思った次第です
また彼に会うことがあれば、ビールの1杯でもごちそうしてあげよう。
そして、万が一彼が大物になった時に社会的に殺されるようなことがないよう、今のうちに詫びの一つでも入れておこう。
なにも成し遂げられていない35歳だけど、謝ることだけは得意なんだ。